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腐乱死体 [洒落にならない怖い話9]

伯父と父は子供の頃、祖父の貿易関係の仕事で香港の港町で2年程暮らした。
当時中国の文化大革命で殺された犠牲者が大陸の河から流れ下り、よく海岸に漂着する事が
珍しくなかったそうだ。父も伯父も死体を最初は怖がったが頻繁に流れてくるようになり
次第に慣れて腐乱した犠牲者を棒で突いたりしてイタズラするようになっていた。
ところがある時調子にのった伯父が死体の顔を蹴飛ばした時…

「オ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーォ……」

死体の口が開き鳴いた…。死体の腹に溜まったガスがゲップの様に出たのだと
伯父は言っていたが父はとてもそんな感じはしなかったそうだ。

その日の夜、父が目を覚ますと布団を頭からかぶり寝台の下で震えている伯父がいた。
どうしたの?と伯父に尋ねようとした時、昼間にみたあの口を開いた腐乱死体が
伯父の勉強机の上で正座しているのがみえた…。

その腐乱死体は小刻みに震えながら、「オ゛…オ゛…」絞り出すように声を出していた。
それを見た父は大声で悲鳴をあげ泣いたので、祖父と祖母が飛び起きて来て
二人ともわんわんと泣きつき朝まで震えて過した。
次の日、事情を知った祖父と一緒に犠牲者があがった海岸に線香と花を供え
二人は冥福を祈り二度と犠牲者にふとどきな事はしなかった。

日本に帰国し伯父はその後…
織田無道みたいに派手な外車を乗まわす、しょーもない坊さんになったが
その傍ら身元不明の遺体を引き取り、永代供養する奉仕活動をずっと続けている。【おわり】

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