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当たり屋 [洒落にならない怖い話14]

よし、書くぞ。先に言う。俺は怖かった。

ここは、地方都市で狭い路地が多い。そして、行き止まりも。
タクシーが一台、その行き止まりまでお客を乗せてきた。
スペースに余裕が無いから、若干バックして
広いところで方向転換をしないと帰れない場所だ。

タクシーが止まりドアが開いた瞬間、
犬を散歩させていた中年男性が何かをタクシーにむかって投げた。
餌だ。犬はリードを引きずったまま、その餌をめがけて走る。
狙いすましたように、後輪の影に餌はある。

…もちろん、タクシーはバックし始める。甲高い悲痛の叫びと、ぐしゃと言う鈍い音。
中年男性は、犬に駆け寄る訳でもなく、真っ先にタクシーの運転席向かって行った。
つまり、そういうことだ。

俺は一部始終を見てしまった。
そして、関わりなくないから逃げた。

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